自伐型林業のすすめ(その8)~研修最終日に待ち受ける大仕事~

2023年9月3日

8月からの5週10日にわたる自伐型林業研修の最終日は、ホダ木講師と受講生のマンツーマンでの伐倒作業。
前日に指導を受けた、残す木と伐る木の選別が終わっていたから、朝9時の点呼が終わるとすぐヤマに直行。

事を起こすには、勢いが大切だ。
効率よく伐倒、玉切り、集材作業をするにも時間の配分が大切だ。いざ出陣!

前日のうちに伐る木にピンクテープを巻いてマークしていました。
受講生10人、講師とスタッフ10人が一斉に伐倒箇所に集まります。伐木処理にはやはり人手が必要です。

それぞれの受講生が選んだ伐る木は、木の形も斜面の状況もまちまち。
だから、この木はどの方向に伐倒するのがよいか、伐倒した後どの方向に引っ張って集材すればいいとか、それらも講師がアドバイスする。

なぜその木を残して、その木を伐ると決めたか。
木の形だけではなく、集材のための作業道との位置関係も考慮して、伐ると決めた一本に全力を注ぐ。

ただ、素人目からみても枯損木や曲がっているなど明らかに劣勢木とわかる木でも、現地の状況をみて伐るのが危険と講師が判断した場合は、別の木に変える。
こういう臨機応変さも経験がものをいうのかもしれない。

通常の受け口切りは斜め60度程度、水平は幹の直径の1/3程度まで刃を入れます。
この方の場合は、木が大きく傾斜しています。
倒す方向にV字型に受け口切りをしますが、刃を入れる角度や水平切りが通常より深くなっています。
これも講師の経験からこのように指導しています。


伐倒するときは、作業する人の足元を安定させること、そして逃げ道の確保が重要なので、周りの人も斜め後ろで作業を見てるように指示される。

本来は木の幹の長さの倍の距離を確保するのが安全、といわれる。
倒れた木が他の木に掛かったことで、衝撃で枝や蔓が上空から落ちてくることもあるからだ。
ただ、実際そんなに距離はとれないことがほとんど、ではある。

この方は隣の木を育成木と判断し、すぐ隣のライバル木を伐倒すると判断したケースです。
傾斜はないのですが、隣に木がある分、作業の時のチェンソーの持ち方、身体の構え方を工夫しないといけないケースでもあります。


伐倒が終わると、これからが人手のかかる集材作業。
このために多くのボランティアのスタッフが配備されているようなものだ。

スリングロープと呼ばれる強固なけん引ロープを伐木とユンボの先端(バケット部)に括り付け、ユンボの操作でじわじわと作業道に伐木を寄せ付ける。

作業道までの距離が長いと、スリングロープを複数連結して引っ張るが、伐木がだんだん近くなると連結したロープを外し、より短いロープに巻き替える。

この繰り返しで伐木を、作業道の適度に玉切りしやすい位置まで持ってくるのだ。

伐った木を重機とロープで作業道まで引っ張ります。
写真の左の外に重機がいて、引っ張っています。
伐倒指導は講師と受講生のマンツーマン、その後の玉切り処理はアシスタント講師の指導で行い、集材はスタッフ総出で一か所に集積して軽トラに積み込みます。

玉切りの作業は、スタンバイしている別のアシスタント講師の指導で、先の尺棒モノサシを使って、切る箇所にチョークで目印を入れる。

3尺ごとにチョークを入れるけど、木が枝分かれしていればその枝を根元から切り落とす。
ホダ木として軽トラに積み込むためだ。

枝分かれの部分は硬くて切りづらいけど、切ったあとは何だかスッキリするのだ。
切ったらスッキリ。散髪みたいだけどね。

処理が済んで整理されたホダ木たち。まだまだ積み込めます。

朝から夕方まで、受講生全員にマンツーマンでの指導だったため時間をいっぱい使い、既に午後4時を回っていたが、この後大事なお話が聞けたのだ。

講師は、製紙工場に近い土地で祖父の代から3代続く林業家で、パルプ材を卸したり炭焼き小屋で木炭を作って卸したりしていたが、10年ほど前に全国の自伐型林業の代表者に出会い、従来の森林ボランティアとは異なる、生業としての小規模林業の在り方を模索してきた方。

それゆえに、林業の6次産業化(一次産業家が加工の二次産業と流通の三次産業を同時に手掛ける)を道内で提唱し、炭や薪、木酢液などをネット通販などで手広く販売し、更には自社林をキャンプ場として整備して営業するなど、技術だけではなく商才にも長けている方なのだ。

ヤマを去っていくユンボと軽トラ。

そこで、商品としてのホダ木、とは。

長さは3尺で大体揃っているけど、一本一本見ると太さも違うし、曲がりもあるし、切り口も違う。
一つの目安としては、

・長さは3尺(90.9cm)±2cm
・太さが6cm以上(それ以下はハネ品)
・曲がりが5cm以内
・切り口が複数個所なく、樹皮の剥がれが少ない
・中心部の赤身が少なく周辺部の白身が多い

などが挙げられる。

そして、ホダ木はパルプ材として売るよりは高値がつくが(北海道内では卸値で1本200円程度、一般販売では500円以上)、薪や炭にすると、手間がかかる分さらに高値がつく、とのこと。

北海道内においては、ミズナラの木が炭に適しているせいで、ナラの木の自生するところに炭焼き職人が多くいるそうだ。
商品としてのホダ木の選別作業、というのを最後で実演して、研修の幕を下ろす。


この研修を修了して、皆さんが今後どのように自伐型林業に取り組みたいか。
今回の主催者から個別に聞き取り調査があった。

主催者のボランティア団体に加入して続ける人もいれば、自宅の庭木を伐りたい、小屋を作りたい、山林を買って自分で管理したい、という方もいた。

僕としては、移住して一次産業に従事したいとの想いからこの研修に参加したので、仕事の選択肢が増えて更なる自信につながった、と実感している。

夕方5時を過ぎて帰宅。熱い風呂に入って休む。
研修はひとまず終わったけど、今月は更なる 移住加速ツアー が待っている。それに備えないとね。

(完)

本研修は北海道自伐型林業推進協議会の指導のもと、函館市が主催し、道南森づくりの会の協力で実施しました。

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