林業の6次産業化とは(その1)~川上から川下へ流れるビジネスモデルを学ぶ~
ちょうど1年前に受講した自伐型林業研修の流れを受けて、今度は「林業6次化」という、木材加工から家具の製作現場の視察を通して
1次産業(生産)→2次産業(加工)→3次産業(流通・販売)
に至る取り組みを学ぶ研修を受講した。
この研修は、現地の山林でチェンソーや作業車を使って実習するのではなく、あくまで現場の視察。
ただ、主催の方が個人事業として自伐型林業、木こりを営んでいて、
・自分が伐った木が製材、商品として流通していく流れを体感してほしい。
・生産者の立場として加工、流通する方々との連携、「川上から川下へ」の流通概念の必要さ、大切さを知ってほしい。
との想いから、この「チェンソーを使わない林業研修」のナビゲートを務めていた。
現地集合のあと、山に入る。
ここは、主催の方が施工した作業道。
この山林は町有林で、役場の委託を受けて整備したそうだ。
この町では、役場の取り組みとして小さな林業を振興しており、木の伐り出しから製材を町の産業として定着させていきたいという想いが主催者とマッチして、整備に至ったそうだ。
良い山、良い森とは何か?
植林された針葉樹が整然と並んだ森がいいのか?
遮る木が無く見晴らしが良い森がいいのか?
だが、自伐に携わっている主催の方によれば、
・木陰から青空が程よく差し込み、笹などの下草も多くない
・そして何より生物の多様性が感じ取れる
・地域の人が気軽に散策したりレクリエーションを楽しめるような森の空間
であることが大事だという。
それが柔軟にできることが、皆伐と植林を繰り返す事業体の大規模林業とは違う、自伐型林業の特長、だという。
樹木、特に広葉樹は本来、成木となるには100年単位の時間を要するものなので、長期的なそして次世代、その次の世代を見据えてまでのビジョンをもって森林をデザインしていくことが大事だという。
例えばミズナラの木からドングリが地面に落ちて、そのドングリが芽を出し自然と成長していく。
そして、成長が見込める木は残し、曲がったり腐ったり、節が多かったりする木は適度に間伐して手入れをしていく。
その繰り返しが、自伐型林業の手法であって、ひいては里山をデザインするという考え方である。
木の地産地消を実践するキャンプ場。
訪ねたのは、町内の民間のオートキャンプ場。
コテージもあり、テントサイトで滞在するキャンパーもちらほらいる。
このキャンプ場のオーナーは、数年前に事業を受け継ぎ、自費で製材機を購入。
バーベキューに利用していたスペースに、最新鋭の巨大な製材機を置き、町内の山林で切り出した丸太を役場や民間の委託を受けて製材し、引き渡すのも仕事の一つとしている。
敷地にある大量の薪は、キャンプに来るお客さんに売るほか、オーナーが暮らすためのエネルギー資源として活用しているようだ。
製材機の脇に置いてあるのが「薪ボイラー」。
薪を投入する箱がストーブではなく、ボイラー、なのだ。
この黒い箱の中で燃焼された薪で、隣のタンクに貯めた水を加熱して温水にするという。
単純な原理ながらも最新鋭の機械!って感じなのが印象的だった。
更に、薪を割る機械というのが、何と刃が左右両方向に動くという優れもの。
これで薪割り作業にかかる時間が短縮される。
それにしても、これだけ最新鋭の機械をオーナーが自費で導入したというのも、この町の林業、木材産業の活性化に役立ちたいという強い想いがあってのことだと思うと、林業6次産業化の見通しは明るいはず。
機械の展示会みたいな流れではあったけど、最後に、1日目の研修を振り返った感想を述べて終了。
参加者の中に、農園と山林を所有する社会福祉法人に勤めている方がいて、障害等を抱えた施設入居者が農作業の就労を通して社会に貢献していく「農福連携」を実践しているという話をしていたが、製材や薪割りなど、入居者ができる範囲の木工を進めていけば「農林福連携」にもつながるのでは、という話もされて、興味を持った。
山で木を伐る。木材を乾燥させて加工する。そして使う。
点と点が繋がって、木材産業の流れがなんとなく掴めた一日であった。
チェンソーを使わない林業研修だったけど、6次化というビジネスモデルのヒントは僕の足元にも転がっているはずと確信して、今日泊まるゲストハウスまで、夕刻の空の下を車を走らせた。