住まいの相性とは
僕は転勤を機に、今のアパートに住んで10年が経った。
アパートだから、不動産とか分譲住宅のチラシとかポスティングで頻繁に入ってくる。
だけど、今まで一軒家を持とうという発想は全然無かったのだ。
一つは、自分が仕事柄転勤族で、数年に1回は異動して、家を構えてもどうせ単身赴任になるのだから、という現実的な話。
10年の間も、次の異動先はどこかな、と毎年春は気をもんでいた。
もう一つは、妻の実家が同じ市内のマンションで、独身時代働いていたときも頻繁に転勤していて、家を持つことのこだわりがなかったこと。
まあ、家を管理することは近所付き合いとか除雪とか、何かと煩わしいという固定観念があったから。
家は資産ではあるけど、住宅ローンに追われるという以前に、家とか土地に縛られることを良しとしていなかった。
ただ、転勤するにしても、僕は独身や単身のときは寮とか官舎にも入っていたことはあったけど、やはりプライベートに仕事の付き合いを持ち込みたくない、との思いがあったから、結婚以来民間アパートを借りて住んでいたのだ。
この10年の間、住み始めたときは夫婦二人暮らしだったけど、5年目で娘が誕生。
出産当時は僕が車で1時間半かかる町で官舎住まいしていたし、妻も周産期で市内の実家に滞在していたから、このアパートを平日空けていた時期もあった。
それでも引き払わなかったのは・・・
やはり住み心地とか相性とか、満足感。そういうのが大きかったと思う。
駐車場は確保され、敷地内に小さなベンチがあり、日当たりが良く、エアコンや電子キー装備。
地理的にもバス停やスーパーもほど近く、妻の実家も近い、職場や駅も近い、など。
そして何より、目と鼻の先に大きめの児童公園、通称「タコ公園」という憩いの場があるのが大きい。
以前はタコさん滑り台がシンボルとして鎮座していたけど、老朽化で惜しくも取り壊し。
3年前からシンプルなタコさんになってしまったけど、ここで遊ぶ娘の成長の早さにはいつも感心させられるのだ。
見える満足度と、見えない満足感。
これが僕たち家族をこの地に引き留めた理由、というか引き寄せ、のような気がする。
ちなみに、10年間で払ってきた家賃の金額を計算したら、780万円、ということがわかった。
だけど、その選択について悔いはないし、先行きが見えないところで物的な資産を持ってもどう転がるかわからない。
情報資産のほうが重要、とまで言われるくらいだから。
どう転がるかわからない人生を、妻は歓迎さえしているように見える。
それならば、家族そろって殻を脱ぎ捨てることも平気だ、って思う。
まあ、少しの準備と決心は必要、だけどね。