菌ちゃん畑で除雪作業。そして地域食堂で語る自然栽培のこれから。
10月の終わり。菌ちゃん先生の講演会を受けにいった、この畑。
ビニルハウスの脇で、スタッフ総出で菌ちゃん先生(吉田俊道さん)と受講生を待ち受ける準備をしていた。
ただ、時期的に野菜の収穫はほとんど終わっていて、大豆の一種である黒千石豆がさやが付いたまま残っているのみで、畑はいよいよ晩秋に向かっていた。
モデルガンに使うBB弾を思わせる黒く光った豆粒を2,3粒採ってポケットにしまい、菌ちゃん先生の実演でみんなでスコップで高い畝を造ったのが思い出される。
そんな畑も、今はこのような雪景色に。
この畑のオーナーさんは、知的障害をもつ息子さんそして有志の方々と一緒に自然栽培で農作物を育て、販売や加工をする活動をしているそう。
障害者が農業分野での活動を通して自信や生きがい、そして地域社会に貢献していくという動きは「農福連携」、農業と福祉の連携といって、農業・農村の課題と障害者福祉の課題の双方を解決させる取り組みとして政府も推進している。
ノボリにある「自然栽培パーティ」というのは、農福連携に着目した福祉施設の方が提唱した自然栽培の全国的なムーブメントの一つ。
ある日の冬。オーナーさんがSNSで除雪のヘルプを呼びかけていた。
この日は地域住民のための食堂を開く日。
食事を作るため除雪ができないということで、そのSNSを見て僕はこの畑の除雪に向かった。
車で40分くらい。朝9時に到着。
しばらくすると、オーナーさんが奥から軽自動車に乗ってやってきた。
車が通れるだけの除雪は、何とか前日にオーナーさんが自力で済ませていた。
「おはようございます。除雪のヘルプを見たので来ました。どのあたりを除雪すればいいですか?」
「そうだねえ・・・ビニルハウスの周り。息子がスコップで雪かきしてくれたけど、通路を造ってきれいにしたいねえ。除雪機使いますか?」
「はい、使います。案内してもらえますか?」
作業場として使っているビニルハウス。奥で息子さんが黙々と雑穀の選り分けをしている。
除雪機をハウスから出し、操作方法を教えてもらってから、作業にかかった。
「地域食堂は(車で2,3分の駅前で)11時からやってますから、お昼にお越しくださいね。」
別れ際にこう言って、オーナーさんは地域食堂に向かっていった。
僕が除雪機を扱う機会なんて、記憶をたどっても無かった。
大きな家も土地も畑も持ったことがないし、むしろ前職では請負業者に事務所構内の除雪を指示する立場だったくらいだから。
ただ、大地に生きると決めた今では、自分が身体を動かす機会を積極的に作っていかないといけない。
除雪機のパワーはそこそこあったが、地面が雪で固まったり平らではないので、押し進めるのは結構難しい。
それでも、夏に畑で中耕機(耕うん機)を使って固い土を耕したり、有機肥料を土に馴染ませる作業をしていた経験から、ある程度要領は押さえていた。
オーナーさんとの別れ際に一つ言われていたことがあった。
ビニルハウスの真ん中あたりに地面が盛り上がっている箇所がある。
スコップで雪かきした雪を貯めている場所(下の写真)で、私の力では進めなくて大変だった。
だから、除雪機に負荷がかかりやすいから注意してほしい、と。
その分、この箇所だけは入念に除雪しようと思って、スコップで手掘りをした後に除雪機を2往復くらいさせた。
汗はいっぱい出たけど、それほど寒くはなく、雪もそれほど固くはなかった。
そういえば、移住前の1年で5キロ、移住してからの9ヶ月で7キロも体重が減った。
夏場の農作業づくめの毎日で、体力もかなりついたのが実感できた。
山場を終えて時刻は11時を過ぎた。
2時間近く除雪をしていたが、ここで一区切りがついた。
12時まで引っ張る必要もなかろう。
除雪が終わり、地域食堂に向かう。
オーナーさんが出迎えてくれる。
奥の厨房には食事を作るスタッフが3人ほど。
食事をしている子どもたち、そして老夫婦。
今日のメニューは、農場近くの畜産公社が提供してくれた豚肉丼と、自然栽培のカボチャ団子入りの味噌汁。
食堂にあった菌ちゃん先生の、10年以上前に書かれた本を読みながらの昼食。
肉も味噌汁も、舌に馴染むやさしい味。
しばらくして、オーナーさんが手を休めて話をしてくれた。
「菌ちゃん先生の講演会にいらしてたんですね。」
「はい。それで僕も春になったら菌ちゃん野菜作りに協力したいと思いまして、畝作りしたい人たちを集めたいなって思っています。先生の新刊本も出たんですよ。」
「ありがとうございます。買ってみますね。私の知り合いも菌ちゃん農法にはまって家庭菜園でやっている人がいるんですよ。」
「そうなんですね。高畝作りも大変ですし、何か手伝えることがあればお知らせください。」
雪が解けると、僕が畝を造っている”村”のほかにも拠点ができると、情報や労働力の交換、共有ができると確信して、食堂で1時間あまりの休憩を過ごした。
ヒット商品の予感。干し芋。
帰り際に、畑でとれたサツマイモの一品種、「べにはるか」の干し芋を勧められ試食した。
今シーズンから売り出した「皮付き」の干し芋。
収穫してからしっかり乾燥、熟成させてから蒸し器にかけ、蒸し上がった芋を細かくスライスして干して作る。
蒸すと甘みが強くなるのが、べにはるかの特徴。
自然栽培で皮ごと食べられるから、この食堂では人気商品みたい。
芋の甘さをかみしめながら、自信作を勧めてくれるオーナーさんの情熱に応えて一袋買って食堂を後にし、畑に戻って除雪機をハウスにしまって後片付けをして帰路についた。
冬の牧場地帯のお馬さんを横目に見ながら、みんなで畝に手を合わせて願掛けをしたときを思い出す。
雪の下に眠る菌ちゃんよ、頑張れ!春は近いよ!
手作り干し芋のレシピを一つ紹介します。
干し芋は細めで小さめのサツマイモが作りやすく、僕の好みでもありますがスーパーで買ったり村で収穫した芋も細めで小さめの芋を選びます。
干し芋も自給できるといいですね。