木こりさんの住処を訪ねて ~森の恵みを生かす庭と沼~

2023年2月24日

お手紙を出した 木こりさん を訪ねに、札幌から車で1時間余りの山あいの町に出向いた。
僕が移住を検討した場所にほど近いところだ。

すっごい山奥なのか?と思いながらも農村地帯を車を走らせると、景色が山の色になっていく。
新しい橋が目の前にあるけど、この橋を越えてもすぐ先は行き止まり。

その橋の脇の砂利道を下ると滝が見え、その滝の反対側を振り返ると・・・
大きな沼が。

すごい秘境に入ったなあ・・・
だけど、何かパワーを感じるものがある。

沼を半周して、目的の木こりのお爺ちゃんのお家に到着。

木の伐り出しはお爺ちゃんが、建築は町の有志の方と一緒に立てた住居と東屋。新しくて頑丈です。

「ごめんください。」誰もいない。
焚き火の匂いに包まれながら、電話を入れる。

「いま山にいるから、30分くらいしたらそっち行くから、自由に見て回って。」
東屋があり、炭焼き窯があり、滝があり、ハンモックがあり。そして沼には水車とカヌーまである。
自給自足の暮らしの場でもあり、ちょっとしたレジャー施設でもある。

やがてすると、クレーン付きのトラックでお爺ちゃんが山から下りてきた。
想像したとおりの、森に生き続けてきた仙人のような方で、物腰の柔らかさの一方、山仕事に捧げてきた人生に誇りを感じているような方であった。

自作の看板とか木工品などを地域のいろんな人たちに提供してきた一方、この住まいの奥に自作のサウナ設備もあった。
暮らしの全てがここで完結しそうな、僕にとってはなんとも理想郷のようなところだった。

沼を半周してお家に就きました。カヌーは木こりさんの知り合いのロシア人から寄贈されたそうです。

お爺ちゃんの山のこだわり話も、程なくして、ボランティアの女性スタッフが二人やってきた。

当地で獲れたリンゴを剥いてくれて、僕たちは美味しくいただきながら、僕たちの今後の暮らしのことについてゆったりと話をすることができた。

特に妻にとっては、このスタッフが来てくれたことが何より心強かったかと思う。
お爺ちゃんだけだと、話の種に尽きてしまうからだ。
志しも一致していて、話も合う方々だったようで何よりだった。

その間、僕と娘はお爺ちゃんの案内でハンモックに乗せてもらった。
山で伐った木を処理して出た蔓を何本も寄せ集めて、かろうじて何とか座れるくらいだったけど、まだ作製途中だとのこと。
もっと蔓を集めて強いハンモックにしていきたい、と。

更に、僕が最も気になっていた池のカヌー。これにも乗せてくれたのだ。
お言葉に甘えて、櫂(かい)とライフジャケットを借りて、娘を乗っけて恐る恐る漕いでみたのだ。

ふらふらと漂っているようながらも、カヌーはしっかり頑丈に造られていて、怖いものなど微塵も感じなかった。

離れからみた遠景。
沢水がこんこんと流れる風景も、とてもマッチしていました。

夕方4時が過ぎ、日も沈みそうなころ、お爺ちゃんの工房にも案内してもらった。

伐り出した木材を自分で加工するため、製材機や旋盤などがいろいろ格納されている納屋。
ここでお爺ちゃんは芸術作品を造っているのか、と実感。

「こっちに移り住んだら、一緒にやらないかい。」
「ぜひともお願いします。」

自分がこの機械たちを操作する姿をすぐに想像できた。
技術を受け継ごう、と。

車で5分ほどで工房に到着。自前の木工場です。
手作り感満載のカート。

「森が第一」「母なる森林」「森のめぐみを生かそう」
お爺ちゃん自作の芸術的な看板に、本物をそして真実を見極めるメッセージが込められているような、そんな感じがした。

自伐型林業。自前で木を伐り出し、自前で加工して、そして流通に乗せる。
僕もその実践家の一人として、この土地で修業しようと心に決めた。そんな2時間の滞在だった。

外も暗くなり、温泉旅館で娘の誕生日を祝う。
6歳の誕生日が、娘の実り以上に僕の実りになったのかな、と思ったところだった。

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